紫色の何か 〜something purple〜

日々の雑記およびそれまでに自分が思ったこと感じたことをつらつらと

【読書】【読書中】雑文集/村上春樹

※「ねじまき鳥クロニクル」のネタバレを一部含みます。 

 

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

 

村上春樹、久しぶりに読み始めました。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」はハードカバーで発売したときに買ったのに積読になってる、しかももう文庫化してるみたいだし…

 

…それは置いといて、最初の「雑文」である「自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)」を昨日寝る前に読んでみたが相変わらずどんなにややこしくて難解な事象(ここでは表題になっている「自己とは何か」)をも平易で滑らかな表現で身体に自然に流し込むような文章を書くものだなと舌を巻く。

久しぶりの心地良い読書感。

やはりこういう文章はこの人にしか書けないなという思いを新たにする。

最後に書かれた「おいしい牡蠣フライの食べ方」のまさに村上春樹流ともいうべき食レポも秀逸、思わず今すぐに牡蠣フライを買ってきてビールで一杯したいという気分になりました。読んだのが日付変わる前の時間帯だったので飯テロもいいところだった。

 

「難解な事象を平易で滑らに文章で表現する」ということ、これが村上春樹作品の特色であり、そして「誰にも真似ができない、その作家にしか書くことができない」領域であると個人的に思っている。

この点で特に秀逸なのは、「ねじまき鳥クロニクル」で間宮中尉が語った「皮剥ぎボリス」のエピソード…いわゆる「ノモンハン事件」の話。

読んだのが確か院生時代の頃なので記憶は正確ではないかもしれないけど、間宮中尉の目の前で仲間が皮剥ぎボリスの手下によって皮剥ぎを執行されるシーン、一言でいってしまうとかなり残酷ではあるが表現自体に「ひたすらグロテスクに書いてやろう」という露悪的な意図を感じなかったので皮剥ぎの最中の描写や、大きな背景としてある「ノモンハン事件」のことも自然にすんなりと読めてしまった。

文章の意味や意図を真に100%理解できたわけではないけれど読んでいるうちはすんなり納得して受け入れてどんどん読み進めていってしまう、この読書感が村上春樹作品の魅力であり中毒性なのかもしれない。

 

500ページ超あるので無理のないペースでゆっくりと読み進めてみます。